「スピリッツ?漫画雑誌?和約だと精神とか魂?なんでスピリッツというの?」
アンサーに初勤務した際、研修で先輩探偵から色々と教えてもらったのですが、カクテルを作るベースとなるお酒「ラム」「ジン」「ウォッカ」「テキーラ」をスピリッツと呼ぶと教わった際の私の率直な感想です。
「ラム」「ジン」「ウォッカ」「テキーラ」、この4つを4大スピリッツと呼びます。
今回は4大スピリッツのお話です。
一般的にはスピリッツ=心、精神、魂の意味ですが、お酒の世界ではスピリッツ=蒸留酒を指します。
では蒸留酒とは何か?と言いますと、水とエタノールからなる混合物である醸造酒を蒸留することで不要なものを取り除いた純度の高いお酒のことです。
ですからアルコール度数は基本的に高いものが多いのです。
さて、ではなぜ蒸留酒がスピリッツと呼ばれるようになり、どのように世界中に広がっていったのでしょうか?
アリストテレス、錬金術、「生命の水」、キリスト教、修道院という単語がキーワードのようです。
蒸留の技術は紀元前3000年ごろにメソポタミア文明で発明されました。
蒸留酒を作るためではなく香水を作るためです。
またギリシャではアリストテレスが「海水を蒸留すれば飲める水を作れる。
これはワインにおいてもおなじことである」と記述しています。
つまり蒸留酒のもととなるアイデアを発案しているわけですね。
この2つを結び付けて蒸留酒を登場させたのが8世紀頃の錬金術師達です。
さて、錬金術というと現代を生きる私達にとってはファンタジー、または胡散臭いものに感じてしまいますが、当時は現在の科学が占めるポジションに位置するれっきとした学問だったのです。
そもそも錬金術は古代ギリシアのアリストテレスの4元素説に影響を受けたものであり、実験を繰り返すことで旧説を否定し、ついには現在の化学へと変貌した学問です。
では錬金術とは何を研究する学問かということをとても簡単に説明すると、「真理を解明する事」。
真理を解明する事により世界の成り立ち、物質の成り立ちを解明し神がどのようにこの世界を作ったのかを追求し、神に近付くことが目的です。
物質を物質たらしめている「性質」を具現化させている「精」を「万物融解液」により物質から解放させ、より完全なものにする。
ですから人間をより完全な存在、神に近しい存在=不老不死を達成することが最大の目的でした。
その最大の目的を達成する手段としての「万物融解液」を生成する過程で、偶然誕生したのが「蒸留酒」と言うわけです。
錬金術師達はこのアルコール度数も純度も高い=完全な存在の象徴として「蒸留酒」を不老不死の効果がある薬として「アクアヴィテ=生命の水」と呼んだのです。
ここでやっとスピリッツに繋がる「生命」と言う言葉が出てきました。
この「生命の水」を使い錬金術師達が人間をつくろうともしたようです。これが俗に言う「ホムンクルス」です。
さて、この「生命の水」が錬金術師たちによりヨーロッパから世界各地に広がり、それを更に発展させたのがキリスト教の修道院です。
意外ですよね。本来なら相容れないはずの錬金術とキリスト教。
考えてみてください。
錬金術の究極の目標は「真理の解明」です。
世界の成り立ちを解明し神に近付く完全な存在となることです。
この考え自体がキリスト教にとっては冒涜です。
神の領域は絶対不可侵領域であり、神に人間が近付く事、生命を作ること自体がタブーです。
もちろんキリスト教は錬金術を迫害します。
しかし、その一方で「生命の水」の生成方法には興味があったわけです。
興味どころか喉から手が出るほどほしかったのではないでしょうか。
なぜなら修道院ではワインとビール、薬を売ることで生計を立てていたのですから。
「生命の水」は蒸留酒ですから純度も濃度も高い。
このことから薬としても販売できるわけです。
このような理由から修道院も蒸留酒作りに参戦したわけです。
迫害を受けていた錬金術師達も富豪や商人をパトロンにしたり他に職業を持つ事で生き延びます。
このようにヨーロッパから世界各地に「生命の水」は全世界へひろがっていき、その土地その土地で様々な「スピリッツ」が誕生していく訳です。
ロシアでウォッカ、キューバでラム、メキシコでテキーラ、イタリアでジンが造られたとされています。
ウォッカなどはモロに「生命の水」の意味を表す言葉のようです。
このような経緯で、スピリッツと呼ばれるようになったのです。
アリストテレスまで遡り更には錬金術師まで登場してしまったので今回も驚きでした。
ではまた次回。
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