探偵うんちく「ラフロイグ」＿六本木探偵バーANSWER

暑い夏が終わり、すっかり秋めいた季節になりました。
朝晩に肌寒さを感じて、衣替えをした方も多いことでしょう。
クローゼットをカーディガンやニットで暖かく満たすように、お酒の衣替えもしてみませんか？

私がおすすめするのは、秋のようにこっくりした味わいのラフロイグというお酒です。
ラフロイグとは、スコットランド西海岸沖に浮かぶアイラ島に所在する、シングルモルト・スコッチ・ウイスキーの蒸留所、および、そこで産出されるシングルモルト・スコッチウイスキーの銘柄のことをいいます。

緑色のビンのコルクを抜くと、まず独特な香りが鼻腔をくすぐります。
ラフロイグはとても香りに特徴のあるお酒です。
この香りは人によって様々な印象があるようです。

私は、ふわりと漂った香りを嗅いだ瞬間、正露丸を思い出しました。
日本人にはなじみの深い、黒くて丸いお腹の薬です。
それから歯医者の待合室、おばあちゃんの箪笥の引き出し……つまり、どことなく薬っぽさを感じる匂いです。

現に、アメリカで禁酒法が施行された時代、ラフロイグ蒸留所は「この液体は酒ではなく薬の臭いだ」と主張して、合法的にウイスキーを販売したことがあるようです。

この香りの正体はピート(泥炭)と呼ばれるものです。
スコッチ・ウイスキーに使用する大麦を発芽させて麦芽にした後、麦芽の成長を止めるために乾燥させる際の燃料として香り付けを兼ねて使用されます。
この時つく香りをピート香といいます。

アイラ島では降水量が多く、このピートの溶け込んだ水が、ラフロイグの個性的な風味を作りだしています。
麦芽大麦はその後キルン（麦芽乾燥塔）で炙り、煙で燻されて乾燥させます。
この煙も、ラフロイグに独特の風味を持たせる重要なものです。
ピートの煙と湾から直接吹き上がる新鮮な潮の風が混ざり合い、ラフロイグの独特の存在感を引きだします。

香りばかりを特筆してきましたが、もちろん味わいも奥深いものがあります。
清廉な口あたりと、癖になるスモーキーな飲み口。
ラフロイグはウイスキー愛飲家の中でさえ、好き嫌いが別れるお酒です。
しかし一度好きになってしまえば、もう、あなたもラフロイグの虜になってしまいます。

実はこのラフロイグというお酒は、英国御用達のウイスキーでもあります。
王室御用達とは、イギリスの許可制の制度です。
王族個々人が、それぞれ気に入った製品の生産者に対して、王室から御用達リストに加える申し出が出され、これに応じた生産者は王室御用達を示す紋章をつける権利を得ることができます。
ラフロイグはチャールズ皇太子の大のお気に入りのウイスキーであることからも、どれほどのおいしさか窺い知ることができるでしょう。

私はラフロイグの香りの清潔さにやられてしまい、グラスに鼻を近づけて、ずっとくんくんと嗅いでいたくなる匂いだと思いました。
寒い季節、風邪予防のプラシーボ効果さえ得られそうです。

さて、このラフロイグの飲み方には様々なものがあります。
オン・ザ・ロックでなめらかな口あたりを楽しむのもよし、ハイボールで爽快な喉越しを楽しむのもまた一興です。
シングルモルトをソーダで割るスタイルに違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、ピートの香りが引き立ち、一層おいしく召し上がることができます。

現在、ラフロイグのブランドアンバサダーとして世界中を飛び回っている、ロバート・ヒックス氏おすすめの新しい飲み方はコーラ割りです。
ライムをぎゅっと絞り入れて飲むと、ラフロイグが苦手という方でも、おいしく味わうことができます。

ここで、知る人ぞ知るラフロイグの香りの豆知識を。
実はラフロイグの香りはなんと、かの有名な妖怪漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる、ねずみ男の服の匂いがするのです。
妖怪博覧会でねすみ男の服が展示されていて、私はその匂いを嗅いだことがあり、正露丸の匂いに驚きつつも笑ってしまいました。
ラフロイグを飲む時、少しだけ頭の片隅にとどめていただけると、話の種になると思います。

あなたはラフロイグのことが大好きになるでしょうか、それとも……？
香りの記憶を紐解きながら、是非ともアンサーで、秋の夜長を楽しんでください。

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